北海道大学グリーントランスフォーメーション先導研究センター

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第4回GX懇談会活動報告

2026.08.17

「熱」をどう使いこなすか
再生可能エネルギーと未利用熱を地域の力に変える


北海道大学GX先導研究センターは、2026年8月7日、学術交流会館にて「第4回GX懇談会」を開催しました。

今回のテーマは「再エネ熱を蓄える・地域をつなぐ潜熱蓄熱」。産業活動や地域で生じる未利用熱をどのように活用し、地域のエネルギーとして循環させていくのか。潜熱蓄熱をはじめとする技術の可能性だけでなく、熱を「つくる・蓄える・運ぶ・使う」ために必要となる仕組みや、社会実装に向けた課題について、産官学の多様な立場から議論が行われました。

当日は104名が参加し、北海道大学による基調講演に加え、企業や自治体から具体的な熱利用の事例が紹介されました。後半のパネルディスカッションでは、熱の「使い手」の視点から、需要側が抱える課題や、熱を段階的に利用する「カスケード利用」の可能性について意見が交わされました。

熱利用の現在地 「熱をつくる」だけではなく、「どう使うか」

開会にあたり、GX先導研究センター長の幅崎浩樹教授から挨拶があり、産業界、自治体、関係省庁、道内大学など、多様な主体をつなぐGX懇談会の意義が示されました。また、2026年度秋以降に開講予定の社会人向け「GX特論Ⅰ」についても紹介され、大学の知を社会へ開いていく取り組みについて案内がありました。

開会の挨拶(幅崎教授)

続く基調講演では、北海道大学の能村教授が、先端技術と地域課題の両面から「熱利用」の現在地を紹介しました。

再生可能エネルギーというと、太陽光や風力による「発電」に目が向きがちです。しかし、エネルギーは電気だけではありません。太陽熱や工場などから発生する排熱といった「熱」も、地域の中で活用できる重要なエネルギー資源です。

一方で、熱には電気とは異なる難しさがあります。

基調講演:先端技術と地域課題から見る「熱利用」の現在地について(能村教授)

すでに始まっている「熱」の地域利用

事例紹介では、熱を生み出し、蓄え、運び、地域で活用するための具体的な取り組みが紹介されました。

事例紹介

太陽熱のダイレクト利用(株式会社寺田鉄工所): 高効率な真空管式太陽集熱器「ソラリス」や、地域全体へ電力と熱を一体供給する「面的利用」の先進事例。

排熱の蓄熱・輸送(高砂熱学工業株式会社):時空間のギャップを埋める吸着材蓄熱システム「メガストック®」や、事業者間をまたぐ熱融通の仕組み「ネツナグ®」。

地域エネルギー循環の課題(北海道鹿追町): バイオガス発電に伴う熱利用において、「熱は足りているが、季節によるタイミングが合わない」というリアルな課題。

熱資源そのものが不足しているわけではありません。必要なときに、必要な場所で使える形になっていないことが、熱利用の大きな壁となっています。

「使う側」から見える社会実装の課題

パネルディスカッション

後半のパネルディスカッションでは、北海道大学の森太郎教授をモデレーターに、「低温蓄熱の現在地と可能性」をテーマとして議論が行われました。

議論では、熱を「つくる側」だけではなく、「使う側」の視点が重要であることが浮かび上がりました。

需要側(よつば乳業株式会社)からは、工場内に存在する未利用排熱や、季節・時間帯による需要変動など、実際の現場が直面する切実な課題が紹介されました。

熱利用を進めるためには、熱源となる技術を導入するだけでは十分ではありません。どのくらいの熱が、いつ、どこで発生し、誰が、どの温度で、どの程度必要としているのか。

供給と需要の双方を把握し、その間をつなぐ仕組みが必要です。

さらに、一つの用途で熱を使い切るのではなく、温度の高い熱から低い熱へと段階的に利用する「カスケード利用」も、熱資源を無駄なく活用するための重要な考え方として議論されました。

今回の懇談会から見えてきたGXの「つなぐ」という側面

今回の懇談会を通して見えてきたのは、GXが単に「再生可能エネルギーの導入量を増やすこと」ではないということです。

太陽が照っているときに生まれる熱を、必要なときまでどう蓄えるのか。

工場から発生する排熱を、捨てずにどこへ届けるのか。

夏に余る熱を、冬の暖房などにどう活かすのか。

こうした課題を解決するには、技術だけでなく、時間、場所、需要をつなぐ仕組みが必要です。

さらに、その仕組みを実際に動かしていくためには、企業、自治体、大学など、それぞれ異なる資源や課題を持つ主体が協力することが欠かせません。

今回紹介されたさまざまな事例は、それぞれ異なる技術や地域課題を扱いながらも、「熱を無駄にせず、地域の中でどう活かすか」という共通の問いでつながっていました。

単独では解けない課題を、地域で考える

懇談会の最後には、GX先導研究センター副センター長の石井教授から「北海道GXコンソーシアム」の構想について紹介がありました。

これまでのGX懇談会が、産学官それぞれの立場から課題や事例を持ち寄る「対話の場」だったのに対し、コンソーシアムは、そこで見えてきた課題を継続的に解決していくための「仕組み」として位置づけられています。

技術を持つ側、熱を必要とする側、地域の資源を持つ自治体、そして研究・知見を持つ大学。それぞれが持つ情報や強みを持ち寄ることで、初めて解決策が見えてくる課題があります。

具体的な体制づくりはこれからですが、GX先導研究センターでは、今回の懇談会で得られた知見を出発点に、コンソーシアムの具体化に向けた検討を進めていく予定です。

今回のGX懇談会もまた、異なる立場の参加者が一堂に会し、技術だけでは解決できない「熱」の課題について、それぞれの経験や知見を持ち寄る場となりました。

総括と閉会の挨拶(石井教授)

「ある熱を、どう使うか」。

その問いを出発点に、技術と需要、企業と地域、大学と社会をつないでいく。

熱利用の可能性を広げることは、エネルギーを地域の中で循環させる新たな仕組みをつくることでもあります。

GX先導研究センターは、今後も産学官の対話を通じて、地域のGX実装に向けた課題と可能性を考えていきます。あわせて、幅崎センター長の挨拶でも紹介された社会人向け「GX特論Ⅰ」は、2026年度秋以降の開講に向けて準備中です。コンソーシアム、GX特論Ⅰともに、詳細が決まり次第、当センターホームページにてご案内いたしますので、続報をお待ちください。

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